マルフォイ家は本当に貴族だった イギリスと貴族の長い歴史
英国魔法貴族・マルフォイ家の暮らしぶり
もしマルフォイ家の当主がマグル界の爵位を有するのなら、侯爵または伯爵ということになるでしょう。封建制度の時代にイギリスに存在した爵位はこのふたつだからです。どちらにせよ、世襲貴族であることに変わりはありません。
ここではマルフォイ家が裕福な伯爵家であると仮定して、彼らの暮らしぶりを想像してみることにしましょう。当主であるルシウス・マルフォイは一体どんな生活をしているのでしょうか?
まず言えるのは、自ら額に汗して働く必要がないということです。貴族に限らず、イギリスでは良家とは商売の必要がなく、保有する地所が生む富で生活できる者を指していました。マルフォイ家も当然、魔法で管理された荘園が財源です。
では日中何をして過ごしているかというと、通常、貴族はロンドンの社交界で過ごします。ウェスト・エンドと呼ばれるロンドン西部には大きな公園や高級クラブがあり、人々はそこで一見楽しく騒ぎつつ、実態としては議会で地位を得るためのコネを探し回ります。
もっとも、マルフォイ家は魔法界の貴族ですから、活動場所は魔法省であったり、もしくは各家が主催するパーティーの場であったりするでしょう。
基本的に、貴族でない人間と対等に話すことはありません。そんなことをしたら一族が代々継承してきた地位を軽んじることになります。事実、マルフォイ家の家長であるルシウスも同じ純血の旧家であるボージン氏に対してまるで使用人にでも話しかけるような態度を取っています。
社交界に入りたいと考える「上流志願者」を選別し、時には推薦するのも貴族の仕事です。すべての貴族が裕福というわけではありません。時には土地を手放す者もいます。そんな中で、若く勢いのある者に素早く目をつけるのは大切な生き残りの手段です。
現代では度重なる改革によって規模も権力も縮小されていますが、貴族院での議員活動は貴族が直接国政に携わる仕事のひとつです。マルフォイ家の場合は、ルシウスがホグワーツの理事として活動していました。イギリス魔法界の司法であるウィゼンガモット評議会の評議員になる予定もあったことでしょう。
さらに、ルシウスには「ヴォルデモート卿の配下だった」という弱みがあります。新聞社や出版者、フリーの記者とは良好な関係を保ちつつ、過去の仲間にも恨まれることのないよう仕事を斡旋したり、時には後ろ暗いことに協力する必要もあるかもしれません。
決まった仕事をしないかわりに、社交界で虎視眈々と目を光らせ、国政に携わり、一族の名誉を守る。自由なようでいて束縛の多い、休みのない仕事です。そんなマルフォイ家が羨ましいでしょうか? それとも、真似したくないと思うでしょうか?
まとめ
この記事ではマルフォイ家が由緒正しい貴族であるということ、そしてマルフォイ家が貴族としてどのようにその富と権力を手にしたかについての考察をしました。
ウィリアム1世の封臣だったアーマンド・マルフォイを祖として、マルフォイ家は貴族としての地位を盤石なものにしていきました。しかし、魔女狩りに対応する形で国際魔法使い機密保持法が制定されると、マグルとの関係を断ち、魔法省に富を投じることで新たな時代を迎えました。
少年であるハリーの視点から見ているとわかりにくい、マルフォイ家の過去。これらを知った上で改めてドラコの言動を見てみると、意外な発見があるかもしれません。
参考文献
ウィザーディングワールド公式「マルフォイ家」(2024/3/20閲覧)
エイザ・ブリッグズ『イングランド社会史』(筑摩書房、2004年)
ダニエル・プール『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたのだろう』(青土社、1997年)
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