「エクスペクト・パトローナム」は何を呼んでいるのか 守護霊の呪文と霊崇拝の歴史

2024年2月29日

まとめ

この記事では魔法ワールドで使われる守護霊の呪文について、その成り立ちを考察してきた。

まず、守護霊とは元々はドルイド教が言うような自然霊であり、守護霊を招来するとはつまり豊作・豊漁を祈願するような儀式だった。そこにキリスト教が流入したことで自然霊にpaterの語が与えられ、善良で神聖な父祖である神を招来する呪文となった。

幸せな記憶が必要なのは荒ぶる自然霊が存在する中で善良なものを招くためのセーフティーである。守護霊の魔術師で呼び出した蛆虫に食われて死んだ闇の魔術師ラクジディアンは守護霊の呪文に失敗したのではなく、そのセーフティーを軽視したために荒ぶる霊を呼び寄せたのである。

現在はキリスト教が魔法界に及ぼす影響は薄く、そのため守護霊に神聖や神という文脈はなく、「プラスのエネルギー」として扱われている。

以上がこの記事での結論である。

  1. これについてはまた別途記事にしたい。 ↩︎
  2. 浜林、1987年 p. 21 ↩︎
  3. 同上 pp. 13 – 20 ↩︎
  4. デイヴィス、2006年 pp. 161 – 197 ↩︎
  5. 浜林、1987年 p. 22 ↩︎

参考文献

J. K. ローリング『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』2001年、静山社

ノーマン・デイヴィス『アイルズ 西の島の歴史』2006年、共同通信社

浜林正夫『イギリス宗教史』1987年、大月書店

魔法ワールド公式サイトより “patronus-charm" 2016年発行、閲覧は2024年2月25日